ミオシンのような多量体巨大タンパク質分子を結晶化させるためには、こうしたタンパク質の大量発現系を作りださなければならない。われわれは、細胞性粘菌を用いて、こうした発現系を構築する試みをおこなった。まず、複数の遺伝子を同時に発現させるために、新たな選択マーカーの構築から始めた。これまでは、ネオマイシン耐性遺伝子を用いることが多かったので、ブラスチサイジンS耐性遺伝子を細胞性粘菌で発言させることにした。ブラスチサイジンS遺伝子の上流と下流に細胞性粘菌のアクチン15遺伝子のプロモーターとタ-ミネーターをつなぎ、この耐性遺伝子が細胞性粘菌内で働くようにし、これを細胞性粘菌シャトルベクターに組み込んだ。こうして作った新たなシャトルベクターに細胞性粘菌ミオシン軽鎖遺伝子2種類を乗せて、これを細胞性粘菌自身に導入した。こうして作った軽鎖over expression細胞に、さらにヘビーメロミオシンの形に切り取ったミオシン重鎖遺伝子をネオマイシン耐性遺伝子につないで、大量発現させた。このようにふたつの耐性遺伝子を用いて、3つのミオシン関連遺伝子を同時に大量発現させるのに成功した。
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