研究概要 |
モルモットに普通食あるいはコレステロールを付加した食餌を与え,飼育した.昨年までの研究で,コレステロールを付加した場合は,血漿から強い自己蛍光が出現し,これがリポ蛋白の酸化と強く関連していることが明らかとなっている.このような現象に続いて,本年は,モルモットの赤血球からも赤色の独特の自己蛍光が現れ,しかもこの現象は飼育期間が長くなるほど増加するという興味ある現象が新たに見つかった.そこで,詳細に検討したところ,赤血球からの自己蛍光は波長のピークが625nm付近にあり,動脈硬化の進展とあわせて蛍光強度が強くなることが明らかとなった.高速液体クロマトグラフィーを用いて赤血球中のポルフィリンの分析を行うと,動脈硬化モデルのモルモットにプロトポルフィリンの増加が見られ,この濃度が顕微分光により計測された赤血球の蛍光強度と強く相関することから,赤い自己蛍光物質はプロトポルフィリンであると考えられた.赤血球のプロトポルフィリン濃度と動脈硬化を関連づけた研究はこれまでに報告がなく,動脈硬化診断の新しい指標となる可能性が考えられた. このような動物実験の研究に基づいて,ヒト赤血球も同様に分析したところ,比較的脂質濃度の高い患者より得られた赤血球から比較的強い赤い自己蛍光が観察されることがわかった.この点については現在詳細な検討を行っているところである. 以上の研究により,動脈硬化症患者の血漿は酸化変性を受けている可能性があることがわかり,かつ赤血球からの赤い自己蛍光強度も増加している可能性があることから,両者を組み合わせることによって自己蛍光の計測が動脈硬化の初期診断方法として利用できる可能性のあることがわかった.
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