研究概要 |
現在、体重がヒトに近い実験動物であるイヌを用いてバイオ人工膵臓の有効性を実証するとともに臨床応用時に生じる問題を明らかにすることを試みている。バイオ人工膵臓が異種移植に適用出来るとは言え、社会的な許容また患者の心理的受け入れ安さを考慮に入れると、ヒト-ヒト間の同種移植にまずバイオ人工膵臓を適用すべきであると考え、イヌラ島を用いてバイオ人工膵臓の作成、さらに移植実験を行っている。現在まで、5匹のレシピエントにアガロースハイドロゲルにマイクロカプセル化したイヌラ島を体重1kgあたり4,300〜18,000個を大網ポーチに移植した、その血糖値正常化期間はそれぞれ4、4、28、42、49日であった。これらの実験から明らかになった解決しなければならない問題点として、(1)マイクロカプセル化ラ島の体積を小さくする、(2)一時に多量のマイクロカプセル化ラ島を移植して、高血糖にさらされることで引き起こされるラ島の消耗防止する、(3)再移植を考えて、機能を失った移植マイクロカプセルの除去と再移植方法の検討、が必要であることが明らかになった。現在、問題(1)については、遠心分離マイクロカプセル化法を研究し、10μmの極薄の壁厚を有するマイクロカプセルの開発を行っている、問題(2)については、ラ島凍結保存法を導入することで解決をはかる、問題(3)については福井医科大学の中川原と長谷川により、皮下への誘導した大網内への移植法が開発されつつあり、またわれわれも繊維芽細胞増殖因子を用いて、皮下にマイクロカプセル化ラ島の移植場所の創製を試みている。
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