アラミドとシリコーンのマルチブロック共重合による医用高強度高酸素透過性樹脂の開発

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07558257
• 研究機関: 鹿児島大学
• 研究代表者: 芹澤 武 鹿児島大学, 工学部, 助手 (30284904)
• 研究分担者: 鯉沼 康美 日本油脂株式会社, 筑波研究所生体プロジェクト, リーダー ; 下高原 哲朗 鹿児島大学, 医学部, 助手 (80216126) ; 丸山 征郎 鹿児島大学, 医学部, 教授 (20082282) ; 明石 満 鹿児島大学, 工学部, 教授 (20145460)
• キーワード: アラミド・シリコーン樹脂 / 酸素透過性 / 気液法 / ミクロ相分離構造 / angle dependent-XPS / static-SIMS / TEM

研究概要

これまで、アラミド・シリコーン樹脂(PAS)について表面及びバルクの構造解析、気体透過性、機械的強度、生体成分との相互作用の評価など様々な基礎研究を系統的に行いPASが実際の医用材料へ応用できることを明らかにしてきた。最終年度の9年度は、実用化を目標に更に詳細な研究を行い、次のことを明らかとした。
臨床における人工肺に近い条件として気液法を用いて酸素透過性の評価を行った。その結果、PASは高い機械強度を持つために薄膜化が可能であり、また現在膜型人工肺として用いられている均質膜より薄く、かつ高い酸素透過性を示すものとして期待される高分子材料であることが分かった。次に、PASの表面性状、ミクロ相分離構造の更に詳細な研究を行った。まず、angle dependent-XPSによりフィルム表面の深さ分析を行い、表面分析深さが深くなるにつれPDMSの濃度が減少することが分かった。更に最も浅い分析深さではPDMS含量によらず表面組成はほぼ一致しておりPDMSホモポリマーと同一であることが推測できた。また、static-SIMSによりangle dependent-XPSより更に極最表面を分析した結果、SIMSで検出される領域は完全にPDMS層で覆われていることが明らかとなった。特に、わずか8wt%のPDMS含量のPASにおいてもその極最表面は、100%覆われていることが示され以上のangle-dependent XPS,static-SIMSの結果よりPASフィルムの極最表面は、PDMS含量によらず完全にPDMS層で覆われていることが明らかとなった。
以上、分光学的解析に加えTEMを用いた直接的な表面及びバルクの構造解析を行った。PASフィルムの切断面を観察した結果、PDMS含量に関わらず表面は薄いPDMS層で覆われていることが確認できた。更にバルクでのミクロ相分離構造も確認され、そのモルフォロジーはPDMS含量に依存した。

研究成果

• [文献書誌] T.Furuzono, K.Senshu, A.Kishida, T.Matsumoto, M.Akashi: "Novel Functional Polymers:Poly(dimethylsiloxane)-Polyamide Multiblock Copolymers VI. A Transmission Eletron Microscopic Study on Microphase-Separated Structure in Aramid-Silicone Resin" Polym.J.29. 201-203 (1997)
• [文献書誌] T.Matsumoto, T.Uchida, A.Kishida, T.Furuzono, I.Maruyama, M.Akashi: "Novel Functional Polymers : Poly(dimethylsiloxane)-Polyamide Multiblock Copolymers VII. Oxygen Permeability of Aramid-Silicone Membranes in a Gas-Membrane-Liquid System" J.Appl.Polym.Sci.,. 64. 1153-1159 (1997)
• [文献書誌] K.Senshu, T.Furuzono, N.Koshizaki, S.Yamashita, T.Matsumoto, A.Kishida, M.Akashi: "Novel Functional Polymers:Poly(dimethylsiloxane)-Polyamide Multiblock Copolymers VIII. Surface Studies of Aramid-Silicone Resin by means of XPS,Static SIMS,and TEM." Macromolecules,. 30. 4421-4428 (1997)
• [文献書誌] M.Akashi, T.Furuzono, A.Kishida, I.Maruyama, T.Matsumoto: "A Novel Biomaterial:Aramid-Silicone Resin Functional Monomers and Polymers"" K.Takemoto,M.Kamachi,R.M.Ottenbrite(Eds),Marcel Dekker,Inc.,42 (1997)
• [文献書誌] M.Akashi, T.Furuzono, K.Senshu, A.Kishida, T.Matsumoto: "Surface Properties of Aramid-Silicone Resin."Advances in Polymeric Biomaterials Science"" T.Akaike,T.Okano,M.Akashi,M.Terano,N.Yui(Eds),CMC Co.,LTD., 19 (1997)
• [文献書誌] 赤石 満、古薗 勉: "第3章 6.1 新しい医用膜素材"医療用高分子材料の開発と応用"" 中林宣男 株式会社シ-エム-シ-, 8 (1998)