本年度は以下の点につき研究を行い、環境影響評価に有用なトランスジエニックメダカを確立させるための基礎実験とした。 まず、モデルケースとして既にクローニングされているメダカ光回復酵素遺伝子を高発現ペクターに組み込んだものを作成し、これが培養細胞にトランスフェクションした時に有効であることを確認した。次にマイクロインジェクション法によりメダカ初期胚に光回復酵素高発現コンストラクトを導入した。 光回復能が遺伝子導入によりメダカ胚で上昇したかどうかを調べるため、紫外線照射メダカ胚に可視光処理し、その後の発生中の形態異常を観察した。マイクロインジェクションしていないメダカ胚でも光回復酵素活性は顕著であった。対照群に比ぺ発生中の形態形成異常が可視光処理によりどの程度軽減されたかどうかを指標としたが、マイクロインジェクション個体での光回復能の上昇を示す有為な差は検出されなかった。これは、体細胞レベルで光回復酵素遺伝子が高発現しているものがキメラ状にしか出現しなかったためと思われる。実際、in situ hybridization法では、当該遺伝子のキメラ状の高発現が観察された。しかしマイクロインジェクションした成体の中にトランスフェクションした遺伝子が存在するものがあることがPCR法により示されたので、この実験で生存した個体を成体まで飼育し、生殖細胞系列への遺伝子導入の効率を調ぺている。また従来のマイクロインジェクションに変わる方法としてエレクトロポレーション法の検討も進めている。
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