環境影響評価に有用なトランスジェニックメダカを確立させるための基礎実験として昨年度に引き続き以下の実験をおこなった。 まず、モデルケースとして既にクローニングされているメダカ光回復酵素遺伝子を高発現ベクターに組み込んだものを作成し、マイクロインジェクション法によりメダカ初期胚に光回復酵素高発現コンストラクトを導入した。この実験で生存した個体を成体まで飼育し、交配実験を行い子孫の光回復遺伝子の発現を調べ、生殖細胞系列への遺伝子導入の効率を調べている。PCR法を用いて、DNA抽出法を改良することで、孵化直後の稚魚を用いても個体を殺すことなく遺伝子導入の有無を調べることが可能となった。また従来のマイクロインジェクションに変わる方法としてエレクトロポレーション法を行った。光回復酵素高発現コンストラクトをGFP高発現コンストラクトとともに受精直後のメダカ胚にエレクトロポレーション法で導入した。24時間後にGFPの発現を蛍光顕微鏡で観察したところ、約3%の生存胚にGFP遺伝子由来の蛍光を確認できた。しかし48時間以降では、マイクロインジェクション法と同様にGFP遺伝子由来の蛍光を確認でなかった。これは、用いたメダカでは、48時間以降に出現する色素細胞が同様な蛍光を発することも一因であるため、この色素細胞の欠損した突然変異体を用いて実験を行う予定である。遺伝的に離れたメダカの近交系間デゲノムPCRにより光回復酵素遺伝子の多型が容易に検出されることが分かったので、これを利用してγ線照射した雄生殖細胞由来のF1胚をスクリーニングして、一方の光回復酵素遺伝子が欠失した個体の検索を進めている。
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