研究概要 |
紫外線は波長によりUVA(320-400nm),UVB(290-320nm),UVC(200-290nm)に分けられ,細胞への影響はそれぞれ異なる.UVBとUVCはDNAに吸収されると,主にシクロブタン型ピリミジン二量体や(6-4)光産物などのDNA損傷を生成する.一方,UVAは酸化ストレスによりDNA損傷の他にも細胞骨格や膜の透過性へ影響をもたらす.そこで,UVA,UVB,UVCが誘発するアポトーシスの違いを,形態変化および線量依存性について比較した.メダカ培養細胞(OCP13)に様々な線量で,UVA,UVB,UVCを照射した.UVB(50-800J/m^2)とUVC(10-30J/m^2)では,照射後4hrで均一に播種した細胞の配置は網目状に変化した.その後細胞と核の萎縮,核小体数の減少,アポ小体の形成などの形態変化が観察された.接着面から剥離した細胞からはDNA断片化が検出され,アポトーシスを起こしていることが明らかになった.一方,UVA(4kJ24kJ/m2)では,細胞と核の萎縮,核小体数の減少は起きたが,アポ小体の形成は観察されず,細胞の配置は均一なままだった.照射により萎縮した核は,UVAやUVCでは,いびつだったのに対し,UVAでは丸かった.UVBとUVCは、細胞にアポトーシスに特徴的なカスパーゼ活性化能が認められたがUVAでは、これが観察されなかった。 紫外線照射直後から4hrまでに光回復処理を行うと,UVBやUVCにより生じた形態変化やアポトーシスは回避されたが,UVAによる形態変化には効果がなかった.これらの結果よりUVAでは、細胞死の引き金となる損傷が、ピリミジン2量体でないばかりでなく、下流の情報伝達系も異なることが考えられた。
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