哺乳類胎仔生殖細胞の操作による遺伝子導入の開発研究

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 07558290
• 研究機関: 国立遺伝学研究所
• 研究代表者: 中辻 憲夫 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 教授 (80237312)
• 研究分担者: 小倉 淳郎 国立予防衛生研究所, 獣医科学部, 主任研究官 (20194524) ; 白吉 安昭 国立遺伝学研究所, 系統生物研究センター, 助手 (90249946)
• キーワード: 生殖細胞 / 性分化 / 減数分裂 / 顕微受精 / 精母細胞 / 生殖巣 / 胚移植

研究概要

マウス胎仔生殖細胞を卵巣や精巣から分離した体細胞と組み合わせて、共培養や再凝集塊培養を行うことによって細胞間相互作用を行なわせる方法について研究した。培養条件を改良して生殖細胞が配偶子分化へ向かう段階を培養下で維持できるかどうかを検討するとともに、胎子生殖巣から取り出した雌雄体細胞から細胞株の樹立を行った。生殖細胞を抗体-磁気ビーズ法により単離する方法、生殖細胞を蛍光色素により生体ラベルする方法、生殖細胞と体細胞との凝集塊を作成する方法、減数分裂期の細胞を抗体によって検出する方法などについて改良した結果,胎子生殖細胞を体細胞と共培養することによって、培養下で減数分裂に入る、つまり卵母細胞へと分化する生殖細胞を検出することに成功した。さらに生殖細胞への遺伝子導入方法に関して最近開発された電気パズルを応用した方法を検討した。一方、遺伝子導入された生殖細胞から動物個体を再構築するために、一次精母細胞による顕微受精方法を検討した。一次精母細胞は減数分裂前の染色体が4倍体の精細胞である。この時期までに、染色体レベルで卵子を受精させる能力があるかどうかを確認するために、一次精母細胞を用いて胚を構築する試みを行った。一次精母細胞は、GV期卵子、Met I卵子、あるいはMet II卵子へ導入し、最終的に2倍体胚を作成した。体外の発生は、Met Iを用いた場合が最も良く、71%が桑実期胚/胚盤胞期胚へ発生した。この方法で得た4細胞期胚を卵管へ移植したところ、4%が産子まで発生した。2匹(雌1雄1)は正常に発育し、子孫も得た。よって、父方染色体は、減数分裂前に受精能を獲得することが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] 中辻憲夫: "マウス胎仔生殖細胞の増殖分化" 蛋白質核酸酵素. 43. 421-429 (1998)
• [文献書誌] Watanabe,M: "Gene transfection of mouse primordial germ cells in vitro and analysis of their survival and growth control" Experimental Cell Research. 230. 76-83 (1997)
• [文献書誌] Nohara,M: "Development of a successful in vitro fertilization procedure and partial characterization of the gamete in the Mastomys(Praomys coucha):a new species for laboratory research in reproductive biology" Biol.Reprod. 58. 226-233 (1998)
• [文献書誌] Ogura,A: "Chromosomes of mouse primary spermatocytes undergo meiotic divisions after incorporation into homologous immature oocytes" Zygote. 5. 177-182 (1997)
• [文献書誌] Ohgane,J: "Analysis of CpG island of trophoblast giant cells by restriction landmark genomic scanning" Devel. Genet.
• [文献書誌] Shin,T.-Y: "Microtubule or ganization in hamster oocytes after fertilization with mature spermatozoa and round spermatids" J.Reprod. Dev.