本研究は動物実験による大脳皮質連合野研究の成果をふまえ、臨床研究のためのテスト装置とテスト・パラダイムを開発し、臨床における連合野機能の研究と動物実験による基礎研究の相補的発展を目指している。コンピュータの導入により、経験の少ない医師、作業療法士、理学療法士でも客観性と精度の高いデータを得ることを可能とする。また、臨床における診断とリハビリテーションへの応用を考慮して、装置の開発に当たっている。今年度は、立体表示コンピュータの導入によって、現実場面に近い臨場感のあるテスト装置を開発した。また、医療機関に持ち込んで簡便にテスト可能なタッチパネルつき携帯コンピュータにテスト・パラダイムを組み込み、健常な被験者で使用テストをおこなった。今回開発したパラダイムは、もぐら叩き課題、空間記憶の遅延反応課題、注意のシフトの課題である。来年度は、これらの課題を立体表示装置を用いて健常な被験者でテストするとともに、携帯コンピュータを医療機関に持ち込んで、臨床使用を行い、その経験にもとづいて実用可能な装置へと改良する。また、ストループ課題、視覚検索課題など新たなパラダイムも開発してテストする。
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