本研究は、動物実験による大脳皮質連合野研究の成果をふまえ、臨床研究のためのテスト装置とテスト・パラダイムを開発し、臨床における連合野機能の研究と動物実験による基礎研究の相補的発展を目指して行われた。平成7年度は、(1)単純反応課題、(2)遅延反応課題、(3)注意シフト課題のソフトウェアを開発するとともに、この課題のテストに用いるための2種類のハードウェアを用意した。タッチ・CRTを用いた設置型の装置は、大阪と九州のリハビリテーション専門病院に設置し、昨年度よりすでに使用テストに入り、今年度も引き続き検査を実施した。また、その成果についてリハビリテーション医学会で発表を行った。携帯用の装置は、初年度開発のソフトに不具合があり、次年度引き続き調整を行った結果、実用レベルに達し現在臨床テスト中である。さらに、平成8年度には、初年度開発の3つの課題のコントロールとして新たに(4)視覚弁別課題、(5)遅延見本合わせ課題の2つの課題を開発し、これも現在臨床テスト中である。こられの研究成果により、経験の少ない医師、作業療法士、理学療法士でも客観性と精度の高い高次脳機能検査が可能となった。これらの研究と同時に、サルでヒトと同じ学習課題(遅延反応)を行ったときに頭皮表面から磁気刺激を行い課題遂行に及ぼす効果を検討した。その結果、運動前野にリーチング運動開始を示す手がかり刺激を呈示した直後に与えた磁気刺激で反応時間の延長を引き起こす事が明らかになった。この動物実験の成果は平成7年度の国際脳研究学会大会および平成8年度の日本脳波筋電図学会大会において発表し、論文を一流専門誌に投稿中である。臨床研究の成果は、平成9年度夏の国際リハビリテーション学会および理学療法士、作業療法士学会で発表予定である。
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