研究概要 |
ヒト染色体21番の疾病関連遺伝子を体系的に検索するために、我々はDNAクローンでゲノム物理地図を作製し、この中の遺伝子を捜し出す方法を選んだ。このため、PAC/コスミド・クローンの染色体への整列化とCpGアイランドを指標にした新規遺伝子の単離・同定法を確立した。 PACがコスミドより安定、かつ、信頼できるゲノムクローンであることがわかり、平成8年度では、全面的にPACに切り替えた。すなわち、ヒト全ゲノムの約20倍量をカバーできるPACクローン52万株を導入し、PCRによる三次元スクリーニング系を構築したこと。さらに、末端シークエンスによる染色体歩行法を確立した。この物理地図からCpGタッグ法でCpGアイランドの分布を検索し、機能遺伝子の所在、遺伝子活性制御と染色体バントとの関係が明らかになり(DNA Research3,175-179,1996)、疾病や発生・分化などの複雑な生命現象のシナリオを書くための基本情報がえられたこと(Mammalian Genome,461-463,1996)も成果として挙げられる。具体的には 1.4メガベースのダウン症領域の高精度物理地図作製を完成し(Genomics32, 375-387,1996)、各種の遺伝子地図を統合したこと。 2.CpGタッグ法で全ての既知の遺伝子、および新規遺伝子としてCBR2,CAF1をマップした。 3.35のCpGアイランドをマップし、その分布密度からhSIMを含むCpGクラスター領域がダウン症発症領域と想定できた。 4.ダウン症領域に隣接するAML1-GART-筋萎縮側鎖硬化症(ALS)領域までの3.5メガベースをPACに置き換え、末端シークエンスによるの染色体歩行技術が確立したこと。 5.ただし、hSIM2を用いたトランスジェニク・マウスの作製は、hSIM2全領域を含むクローンが単離できなく、9年度に持ち越した。
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