研究概要 |
現在まず取り組むべき課題である光学定数の測定を,レーザプラズマ光源を用いた斜入射分光器に付帯した反射率計を使って行っている.試料はSiO_2,LiF,BN,Si,C,Cu,Mo,A1,Mg等である.光学定数のデータの蓄積はまだ多くない.しかし,膜質について次のような注意すべき点が判明した.すなわち,マグネトロンスッパタで薄膜を作製する際,スパッタに用いるアルゴンが薄膜に極めて微量であるが埋め込まれることが分った.このことが,多層膜の性能に関して大きな影響を与えるのか,或いは与えないのか今後多層膜の反射率測定を通じて判断していく予定である.また,LiF膜上にSi膜をのせる場合には,Siが通常のバルクの性質のものでも非晶質のものでもない第三の相のものになっていることが分った.この相のものが何であるかを本年度納入された反射高速電子線回折装置(RHEED)解明するとともにこのことを十分考慮して多層膜を設計・製作する予定である. また理論的検討を行い,高い反射率を得るには消衰係数が小さく屈折率の差の大きい物質を組み合せる必要があるということをすでに見出している.さらに一定の周期構造を持つものの他に,非周期構造を持つものも検討している.実際の多層膜の作製においては物質の組み合せとしてまずA1/C系をとりあげた.A1とCの種々の膜厚の組み合せのものを作製し,現在波長30.4nmにおいて非偏光に対する入射角30°の反射率(s-偏光とp-偏光の反射率の平均)が12%のものを得ている.通常の物質のこの波長における反射率は数%であり,それより十分高い反射率であるが,目標は30%以上でありまだ十分とは言えない.今後他の組み合せ,膜の粗さの減少等を行い反射率を向上させていく予定である.
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