蛋白質と核酸を含む巨大な構造体結晶を念頭に、超高輝度X線発生装置と点収束光学系、迅速な自動測定が可能な広い受光面をもつ回折計、及び試料低温装置からなる実験室X線強度データ収集系を構築した。 1)位置分解能と向上と測定限界分解能の拡大 集光光学系:焦点寸法は0.1mm(0.1mm×1.0mm) カメラ半径と受光面の拡大:300mm×300mm バックグラウンドの抑制:ヘリウムパス 2)X線の高出力と高輝度化 回転対陰極の大型化と高速回転:直径250mm、回転数9000rpm 3)結晶の安定化:試料低温技術:100K このデータ収集系での1枚のIPの読みとり時間は3分となった。消去や移動等に約1分要す。リゾチーム結晶で行った種々の予備実験(結晶とIPフィルム間の距離は100mmとしてあり、このときの分解能の測定限界は、今回の測定システムでは1.66Å、従来型では2.0Åとなっている)では、従来のデータ系と比べてももっとも大きい差はR(merge)に現れた。今回のシステムが4.5%であるのに対して、従来型は7.7%となっている。従来型の露光時間を長く(2-3倍)して、両者の強度を同程度にして測定の完全性(completeness)を同一にしてもこのR(merge)の差はなくならなかった。今回の予備実験では1.5%-2%の差が残っている。巨大な構造体結晶は回折能が弱く、モザイク性も大きい。また、大格子になりやすく、回折の異方性も大きい。更に、結晶は非常に不安定で、些細な条件変化に対して、すぐにその回折能を失う。これらの結晶を用いた時の、今回構築したX線強度データ収集系の真価は来年度判断する。
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