1)実験室における最適X線強度データ収集系の開発 迅速な自動測定が可能な広い受光面をもつ回折計を理学電気(株)と開発すると共に、超高輝度X線発生装置と点収束光学系、及び試料低温装置からなる実験室X線強度データ収集系を構築した。A)位置分解能と向上と測定限界分解能の拡大:焦点寸法0.1mm(0.1mm×1.0mm)の集光光学系:300mm×300mmの受光面と大型カメラ半径:ヘリウムパスによるバックグラウンドの抑制、B)X線の高出力と高輝度化:直径250mmの大型回転対陰極:高速回転:9000rpmの回転数、C)結晶の安定化:100Kの試料低温技術 2)実験室における最適X線強度データ収集系の適用 開発した上記システムを以下の構造解析に適用し、その有効性を確認した。 A)タンパク質-DNA複合体結晶:マウス由来の転写因子IRF-2のDNA結合ドメインとDNAオリゴマーとの複合体結晶を、MIR-MRより位相決定した(東大医・谷口維紹教授との共同研究)。酵母由来のリン酸代謝系の転写因子PHO4のDNA結合ドメインとその認識配列DNA(PHO5遺伝子のUASp2)との複合体の結晶構造を分解能2.8Åで決定した。また、分裂酵母由来のAP-1様転写因子PaplのDNA結合ドメインとDNAオリゴマーとの高分解能(2Å以上)複合体結晶を作成して、MIRより位相決定した(京大理・柳田充弘教授との共同研究)。 B)細胞内シグナル伝達タンパク質結晶:His-Aspリン酸リレーにおいて鍵となる機能構造モジュールの三次元構造を決定し、HPtドメインと命名した(名大農・水野猛教授との共同研究)。更に、リン酸化HPtドメインに対してフォスファターゼ活性をもつ蛋白質として水野(名大農)らにより世界に先駆けて単離されたSixAのMIRよる構造決定に成功し、これがα/βフォールドを基本骨格とすることを見出した。また、真核細胞における細胞内情報伝達系での蛋白質間の分子認識機構を解明する目的で、低分子量G蛋白質RhoAの結晶を得て構造決定した(奈良先端・貝淵弘三教授との共同研究)。 C)細胞外シグナル制御タンパク質結晶:マウス海馬cDNAライブラリーからクローニングされた新規セリンプロテアーゼであるニューロプシンは記憶・学習の基礎過程である可塑性の形成に関与していることがわかっているが、その結晶構造を決定した(奈良先端・塩坂貞夫教授との共同研究)。
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