当初3ヵ年計画で申請した当開発研究は、初年度の平成7年6月、補正予算の成立によって、その内定が伝えられ、準備に掛かったものである。第2年度の平成8年が、最終年度とされたため、全体的にかなり時間的に無理な計画となり、成果が心配されたが、寒剤を用いない稀釈冷凍機を完成させ、40ミリケルビン以下の低温を2週間にわたってつくり出す事に成功した。この成果は平成10年7月の低温工学国際会議ICEC17で発表する予定である。 本研究は、研究代表者らによるJT予冷稀釈冷凍機の経験と研究協力者らによる4Kパルス管冷凍機の経験を元に、「寒剤を必要としない、連続運転の出来る超低温実験を可能とする稀釈冷凍機」を開発しようとするものである。前者は、循環する^3He自身を、分溜室から蒸発させる^3Heの寒冷を用いて充分高温で予冷した後、ジュール・トムソン膨張により低温を得、更に分溜室の寒冷とで完全に液化するという予冷過程を持った稀釈冷凍機で、温度とエンタルピーバランスを工夫することで、寒剤としての液体Heを必ずしも必要としない。後者は、Heの気柱振動の位相と温度分布を制御することによって、室温から、3K以下までの冷凍をほとんど機械的振動無しに行おうとするもので、低温工学の最先端の開発課題の一つである。しかるに、このタイプの冷凍機は安定に大きな冷凍能力を維持するのには、まだ大きな課題を抱えている。 我々は、充分な冷凍能力を持たせる必要から、1段目ギフォード・マクマフォン(GM)冷凍機2段目パルス管冷凍機のハイブリッド冷凍機を4K程度までの予冷に用いることにし、振動を伴うGM部分を真空容器の中で機械的に切り放す工夫を行った。振動を切り放すことと、熱的に良好な接触を得ることは、相矛盾することが多く、実験的に最良のコンビネーションを調べた。物性研究所で開発した稀釈冷凍部を用い、より低振動でより低温までの冷凍機の開発を行うと共に、これまでの我々の技術で得られる簡便な稀釈冷凍機を除振の工夫を最小限にした状態で実現させ、試験した。これが上に述べた40ミリケルビン以下までの低温を連続的に作り出している。
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