研究概要 |
IL-2,IL-3,Epoなどの細胞増殖を強く促進するサイトカインにより活性化される転写因子STAT5の機能を探るために優勢抑制型変異体dnSTAT5を作成し,造血細胞で発現させた.dnSTAT5はIL-3依存性細胞BaF3ではIL-3依存性の増殖を抑制し,STAT5で制御されている遺伝子の中には増殖に関与するものがあることを示した。一方,EPOに応答して分化する赤芽球細胞株SKT6では,(1)STAT5を活性化するプロラクチン(PRL)受容体を発現するとPRL依存性に分化すること,(2)STAT5の活性化が起こらないEPO受容体の変異体では分化誘導が認めれないこと,さらに,(3)dnSTAT5を発現するとEPOによる分化誘導を抑制した。以上の結果から,STAT5はSKT6細胞では分化誘導に重要な役割を果たしていることが強く示唆された。このように,STAT5は細胞ごとに異なる機能を示すことが明になった。 一方,IL-3やEPOなどはRasの活性化を介して細胞死の制御を行うが,活性化型Rasのeffectordomainに変異を導入した部分活性化型Rasの発現によりRasはRaf/Mapキナーゼ系とラパマイシン感受性のシグナル系を活性化し、それぞれが細胞死の抑制に作用するとの結果を得た。 今後はdnSTAT5,Ras変異体をはじめ様々なサイトカインシグナル分子の活性化型および優性抑制型をレトロウイルスベクターを用いて初代培養細胞系などより生理的条件下で発現し、各シグナル系の機能を検証する予定である。
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