研究課題/領域番号 |
07559020
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
桜井 靖久 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (20010027)
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研究分担者 |
菊池 明彦 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (40266820)
青柳 隆夫 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (40277132)
岡野 光夫 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (00130237)
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キーワード | フェニルボロン酸 / グルコース / インスリンデリバリー / 人工膵島 / 高分子コンプレックス / インテリジェントマテリアル / 生理的pH |
研究概要 |
血中の糖濃度に応答して適切にインスリンを投与することができる人工膵島システムは、糖尿病患者を効果的に治療できる手段としてその開発が緊急課題となっている。本研究では、フェニルボロン酸が多価水酸基化合物と特異的かつ可逆的な共有結合を形成することに着目し、血中の糖濃度に敏感に応答して必要量のインスリンを放出しうる新しい人工膵島システムの構築を目指した。フェニルボロン酸のpKaは8.6であり、生理的pH(7.4)ではグルコースと可逆的な結合をしうるボロン酸は6%程度しかない。一方、フェニルボロン酸含有ポリマーへのアミノ基を導入すると、pH7.4でのフェニルボロン酸とグルコースとのコンプレックスはアミン含量に依存して増大した。アミノ基を導入することで生理的pHでのェニルボロン酸とグルコースとのコンプレックス形成が安定化でき、かつ、感度よくグルコース濃度を検出できることが示唆された。この結果を受けて、インスリンの3つのアミノ基のうち2つをグルコンアミド化してアミノ基含有フェニルボロン酸ゲルに結合させ、外部のグルコース濃度の変化にともなってゲルから置換・放出されるインスリンの放出量変化を液体クロマトグラフティーシステムを用いてpH7.4で解析した。放出インスリン量はグルコース濃度の増大に応答して大きくなった。さらに、パルス的にグルコース濃度を変化させた場合グルコース濃度変化に追随してインスリン放出を制御でき、これは120時間以上継続できることがわかった。このシステムを用いるとヒトで24IU/日のインスリン投与が必要な場合に理論的にはわずか1.36cm^3のゲルがあれば正常な血糖値を維持できる計算になり、in vivoへの応用に適したシステムが構築可能であることが示唆された。以上の結果、グルコース濃度に応答してインスリンを放出する新しい人工膵臓システムの基礎的知見を集積することができた。
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