9年度は本研究課題にもとづく研究の最終年度であるため、行為におけるエネルゲイア概念の現代における意義を検討するという課題を継続すると共に、研究成果をまとめる作業を行った。 1 現代の行為論、倫理学の問題に関するアリストテレスの行為論の意義を検討しつつ、7-8年度を通じて行ったアリストテレスの『ニコマコス倫理学』『政治学』のテキストの分析を継続した。この中で、前年度にその重要性を認識したヘクシス概念についての分析、またアリストテレスの共同体概念についての検討を行った。 2 本研究にともなうアリストテレス理解の変化に応じて、本補助金を受ける以前に公表したアリストテレスの行為論に関わる論文を含めて、これまでに公表した論文の見直し改訂の作業を行った。 3 以上をあわせて、「研究成果報告書」として纏める作業を行った。「研究実成果告書」には、アリストテレスの行為論に関わる以前の論文を改訂再編したもの3編、7-8年度に公表したアリストテレスの行為論に関わる論文を改訂したもの2編、今年度新たに行った研究論文(未公表)2編のあわせて7編(400字詰め350枚強)を収録した。この際、本助成金によって購入した備品、ソフト、また作業補助の謝金が、作業を進める上で大きな助けとなったことを申し添えておきたい。 5 アリストテレスにおけるエネルゲイア概念の現代における意義は、その十分な解明のためには、『形而上学』『霊魂論』における「生物学主義」の検討が必要であることを確認し、そのために引き続き、「心の哲学におけるエネルゲイア概念の意義についての研究」を申請することとした。
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