2カ年にわたる研究の第1年目に当たる本年度は、基礎作業として関連文献資料の網羅的な収集と諸家の見解の批判的検討に主眼点をおいた。この遂行課題に関連した最近の研究成果は、米国のものを中心にかなりの数にのぼっている。また研究の主要対象となるべきプラトンの対話篇-特に若干の重要な初期対話篇および『メノン』と、『饗宴』『パイドン』『国家』などの中期著作-については、依然として多数の充実した注釈書・研究書が相次いで刊行されている。現在これらの成果を総覧しつつ、プラトン哲学そのものの理解を深めることに努めるとともに、古代哲学専門誌Boston Ares Colloquim in Ancient Philosophy およびAncient Philosophy などで盛んに交わされている議論、K. SeeskinやA. Hylandなど特に考察上の接点の多い論者たちの見解をフォローし、取りまとめつつある。また、一時代前の、P. FriedlanderやL. Edelsteinらの議論にも新たな検討に値する主張が見られ、これらについても注意をはらっている。 この過程での成果を踏まえて、現段階における中途経過的な報告を目下取りまとめているところで、当面3月末の学内の古代哲学研究会において発表を予定している。また、同じく本年4月初めに刊行予定の編著書『フィロソフィアの源流と伝統』においては、ソフィスト思想およびプラトンを扱った2つの章の孰筆をも担当し、所掲課題の遂行との関連においても得るところが大きかった。
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