研究概要 |
1)初年度においては,まずヘルマン・シュミッツの現象学における身体・感情・雰囲気・風・気候・風土の概念を再検討し,世界のシュミッツ的意味を明らかにした。ヘルマン・シュミッツの身体と感情の概念を現象学的な観点から根本的に検討し,感情を主観・客観関係を越えた深い次元において把握した。シュミッツの著書のうちまだ保有していない最近2年間の著書や,とくにシュミッツの『退官記念論文集』,キ-ルの「新しい現象学」の学会の年報(Neue Panomenologie in der Diskussion)に現れている論文を検討して得るところが多かった。身体・感情・気候・雰囲気の観点から見られた生活世界の概念の一層の具体化をはかり,「気」と雰囲気の現象学的な意味を明らかにした。これは,一連の『「気」の哲学と雰囲気』という論文において明らかにされた。 2)最終的に,シュミッツのなかにある雰囲気・感情・風土・風の現象学を,フッサールやハイデッガ-に発想がみられた生活世界の現象学の具体化の道として解明できた。 3)初年度の研究の成果にもとづいて,第2年度では,生活世界の現象学の具体的な体系化を企てたが,それは,機能論的な存在論というべきものである。これは,私の編集になる『世界・地平・雰囲気』に掲載の私の論文「身体・意識・言語」に結実した。 4)フッサールの生活世界の理論や,アルフレート・シュッツの生活世界の現象学的社会学を具体的に検討し,生活世界の概念を洗い直し,生活世界の現象学理論の体系化を企てた。現象学的哲学という専門分野を越え出て,むしろ社会学,民族学の生活世界の概念をも探究した。しかし,これらは,これからの研究の基礎となるもので,いまだ具体的に研究成果となっていない。
|