1)平成7年度においては、まずシュミッツの現象学における身体・感情・雰囲気・風・気候・風土の概念を再検討し、世界のシュミッツ的な意味を明らかにして、生活世界の現象学の体系化の基礎を築いた。シュミッツの身体を感情の概念を現象学的な観点から根本的に検討し、感情を主観/客観関係を越えた深い次元において把握することに努めた。シュミッツの最近二年間の著書やとくにシュミッツの『退官記念論文集』、キ-ルの「新しい現象学の学会」の年報に現われている論文を検討した。就中、シュミッツ解釈の点から、ゲルノット・ベ-メの論文から「物の脱自態」の概念と彼の独特の雰囲気概念から学ところが多かった。かくして、身体・感情・雰囲気・風・気候・風土などの諸概念の一層の具体化をはかり、「世界」の概念との関係において得るところが多かった。 2)シュミッツの主観/客観/関係を破壊する「端的な知覚」の思想から「感情と雰囲気の超主観的な存在次元への問い、身体の広がりとそれの狭ばりとの関係に検討を加えて、これらをクラウス・ヘルトの『ヘラクレイトスとパルメニデス』書の「エレメント(地水火風)の現象学」における生活世界の原初的な概念と対比した。 3)平成8年度においては、最終的に、シュミッツの現象学のなかにある「風の現象学」を、フッサールやハイッデガ-にその発想が見い出される生活世界の現象学の具体化の道として研究した。これらは、香港の世界現象学会(中国、ドイツ、アメリカ、日本の共同研究学会)、日米現象学会などで『「気」の哲学と雰囲気-風の現象学の試み』として発表され、日本語、英語、ドイツ語で出版されたか、もしくは、出版されつつある。
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