本年度は、ビュフォンの自然誌(自然史)研究それ自体を中心に、科学史的調査をおこなった。 まず、ビュフォンの『一般および個別自然誌』の原典については、さいわいすでにその初版本の全巻にわたってマイクロフィルムが取られ、市販されていたので、これを購入した。ついで、科学史上の関連資料を収集するとともに、それらを参照しながら、『一般および個別自然誌』の分析に当たった。 もちろん厖大なこの著作の全体を分析しつくすことはできないが、地球を含めた宇宙生成論の系譜の中での位置づけ、生命論をめぐる当時の論争の中でのビュフォンの位置の確定、そくに四足獣を中心にした狭義のビュフォンの自然誌と他の自然誌家達の仕事との比較など、その科学史的に主要な論点に関する解明において、一定の成果を挙げることができた。 これらの科学史的調査研究によって、次年度に予定している哲学史的調査研究、最終年度の総合的な思想史的調査研究にむけた、本研究の第一段階を完了することができた。また、ビュフォンの科学方法論との関連では、その経験論的立場の先駆である、十七世紀のメルセンヌとガッサンディに関して、メルセンヌ・アカデミーの成立の歴史的・思想史的背景についてと、ガッサンディの経験論のデカルト的合理論との対比的性格について、研究成果を論文としてまとめることができた。
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