本年度は、一昨年度、昨年度それぞれにおける、ビュフォンの自然誌を中心とした科学史的調査研究、ならびに前世紀以来の合理論的系譜と経験論的系譜の中にビュフォンを位置づける哲学史的調査研究によって、個別に明らかにされた研究成果を綜合的に再吟味しながら統合し、十八世紀の啓豪思想を十七世紀以来の西洋近代の思想史の中で新たに位置づけ、その哲学的意義を再検討することに取り掛かった。 現在までのところは研究成果の公表は、今春に刊行される、十八世紀での論争の先駆けとなる十七世紀における合理論者デカルトと経験論者ガッサンディとの論争に関する論考に留まる。しかし、いまだ公表には至らないものの、確立されていく近代科学を基底にしながら形を取っていった西洋近代思想の根本的問題機制を明かにし、キリスト教的ヨーロッパ文化を母胎に形成された近代思想が真に普遍的文明の原理たりうるかを判定するための基礎作業を行う、という、所期の目的を達成するための研究において、一定の成果を収めることができた。
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