一般に小道蔵と称される『雲笈七籖』は、魏晋南北朝から北宋初に至る時期の所謂る古道教の教理、修道法、神格や得道、修道者の伝承、伝記などを総括収蔵したもので、古道教研究にとってきわめて重要な根本資料の一つである。しかしながら、これまで、その文献的性質についての精密周到な調査検討がなされないままに、きわめて便宜的に利用されてきた感がある。収録された各種文献が、時代を異にし、系統を異にしている上に、本書編纂に際しての一定の方針が存在していたとすると、文献の性質をおさえないままでの便宜的利用は、結論を導くに当たって種々の偏りを生ぜせしめる恐れがある。かくして、まず、本書の成立事情を考え、ついで現在流通している版本の状況を考え、更に、本書の全体構成、基本的立場、巻数増加問題、各種資料の節録状況を考察して、本書の基本的性質を把握した上で、更に、「老君太上虚無自然経」ほか、仙籍語論要記所収道典について、その基本思想等を考察した。
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