1)内舘文庫は、近世江戸期には地域の七座天神(ななくらてんじん)の別当神宮寺として、地域の有力な修験道の寺院として機能しており、また私塾内舘塾が設けられていた関係から、三千数百点という膨大な資料が現在も収蔵されている。これら所蔵資料の中には、禅宗相伝資料や切紙資料も多数含まれており、中世から近世にかけてこれが修験道に取り入れられて、地域の民衆生活と密接に関連しながら機能していたことが判明した。 2)平成8年度は、前年度に調査収集した資料の整理をまず行った。第1は、秋田県内館文庫所蔵資料の整理で、修験道関係典籍、相伝書はほぼ見通しが立ったので、今年度中に目録作成を終えて、研究、資料紹介も併せて発表する予定である。 3)引き続き、内館文庫所蔵資料のうち、神道関係資料の調査もほぼ終えることができた。目録作成と研究、資料紹介は来年度になるが、一応内館文庫の調査も完了に近づいた。 4)各大学附属図書館や史料館、文書館、さらには各地寺院に所蔵される切紙・門参等の抄物資料の調査も併せ行っているが、今年はデスクワークが中心で、これまでの収集資料の中から、特に注目される中世より伝承を有する切紙類について分析を行い、旧稿に手を加える作業に追われた。 5)「禅宗相伝資料」、就中「切紙資料」を分析検討して、中世社会における宗教・仏教の実態を検討しつつ、これが果たした社会的役割や正・負の両機能について、その歴史的社会史的な跡付けを改めて検討し、『禅宗相伝資料の研究』として全体をまとめることができた。これを今年は出版する予定で、第1回の入稿は終えることができた。
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