『祖書綱要』全二十三巻六十四章は一妙院日導(1728〜89)の著作であり、教相勝劣・教旨一致の古典宗学を大成したものであって、いわゆる日蓮教学の大系化を為し得たと後代高く評価されているものである。 しかし、その分量厖大にして引文が煩鎖であり、しかも頗る難解な文体・内容をもつものであるため、いまだに書き下ろし和訳文の作成や科段・注釈の作成という基礎研究はなされていない。何より古典宗学を体系づけ、現今の宗学に与えた影響を鑑みても、本書の研究は強く望まれ これらの諸事情を鑑み、今後の宗学研究の展開を期するためにも、基礎研究が急務であり、また本研究に関し、代表者は既にその基礎研究に着手しており、その成果は書き下し文や科段・語註と共に一部公表しており、一層の研究の進展を図らんとした。 1)出来得る限り資料(版本・写本)を蒐集したが、その際必要に応じて諸大学図書館及び国会図書館等に調査の為に出張した。また諸本を対校してヴァリアントを抽出し、テクスト・クリティークを行った。 2)活字化することを前提に、原漢文の本書全文について訓読して書下ろし、意味の不明瞭な語句・字句に関しては適宜補註した。 3)活字化した場合、その煩雑な引文、議論に対し意味の明瞭を期し、異解の可能性を示し、また問題の所在を示唆するため、適宜括弧等を設けて補註した。 4)引用される祖書は「昭和定本日蓮聖人遺文」を以てその出所等を確認し、異本中のヴァリアントにも留意し、それを指示した。 5)また現代的要請に配慮し、コンピューターを利用してデータベース化を計り、「祖書綱要」中に引用される日蓮遺文の索引化、または項目化して、研究者に公開した。
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