研究概要 |
法称の主著『知識論決択』(Prama^^-navinis^^'caya)第三章(=PVin III)の和訳研究(『東洋の思想と宗教』14)において、帰謬法(prasan^^・ga) の論証としての妥当性が法称によってどのように証明されているのかを考察した。そこでは、サーンキヤ学派からの疑似的帰謬法と法称の正しい帰謬論証との相違を分析することにより、法称の考えていた帰謬法の論理的な構造を明らかにした。この成果は、散佚した梵文の断片の回収と共に、PVin iiiの独語訳研究としてウ-イン大学のインド研究所の研究誌(Wiener Zeitschrift Sudasiens,Band 41,1997) にも発表される予定である。法称の帰謬法説は、チベット仏教論理学にも影響を与えており、チベットの最初期の注釈者の一人であるgTsan^^・ nag pa(11世紀)は、法称の法謬法論に基づき、詳細な論を展開している。そのgTsan^^・ nag paの帰謬法論には、法称の著作の注釈者であるPrajn^^〜a^^-karaguptaの見解とパラレルな部分があることを示した(この論文は、『第七回国際チベット学会議事録』(今年度出版予定)に収載される)。Bu ston(1290-1364)も、Prajn^^〜a^^-karaguptaとDharmottaraの帰謬法の解釈に相違があることに言及している。両者の注釈の文献学的な研究にたより、そのBu stonの言及が、実際に両注釈者の論書の説にまで遡って跡付けられることを証示した(『今西教授記念論集』収載)。
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