研究概要 |
1.本年度は聖公会およびル-テル派に主たる焦点をおき調査を進めた。調査方法はこれら諸教会(各個教会・教区事務所・教団本部・神学校など)および教会関係者が所蔵する記録・文献の収集・複写・面接と共に、各個教会所在地発行新聞の閲覧を行い、資料の収集に努めた。 2.聖公会宣教師の本格的布教活動は、1873年(明治6)年のキリシタン禁制高札撤廃後であり、まず英字修業を目的に長崎滞在中の士族出身青年にむけられ、入信したかわらに神学教育を施し伝道師に育成した。その伝道方策は神学校所在の長崎を拠点に、これら伝道師の出身地(佐賀・熊本)に宣教師共々赴き、若キの入信者を獲保すると伝道師を定住させるものである。やがて熊本が第2の拠点となり、鹿児島・延岡・宮崎・大分へ,また福岡を拠点に久留米・北九州へと伝道地が拡大され、明治末期には九州の主要都市のほとんどに教会または講義所が開設されている。さらに、リデルいまの救廂事業。回春病院開設も注目に値いする。 3.後発のル-テル派は佐賀を拠点に布教活動に入る(1893年)、この場合、宣教師は他教派で育成された信徒を伝道師とした採用、佐賀から当時九州の中心都市熊本へ、そして久留米・福岡と九州北部を中心に布教している。 4.両者共布教に際して私塾を設立、とくに英語教育を布教の手段とする傾向がしばしばみられる聖公会の長崎・熊本・鹿児島,ル-テル派の佐賀・福岡はその好例である。たしかに青年層への布教に資するところがあったが、すべて永続的教育機関としての成長はみられない。 5.次年度は、現在、日本基督教団に加入している旧教派(メソジスト・日本基督・日本組会の諸教会)の明治期九叶における動向を観察する。
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