研究実施計画は、1.中国の女青年会(YWCA)系の女性雑誌と国民党系の新聞副刊及びその傘下の女性雑誌の目録作り 2.蒋介石が推進した復古・新生活運動が当時のフェミニズム運動や思想状況に与えた影響を考察し、さらに日本の女子教育思想との関連を探ること、であった。 これらの中で、現在までの研究実績として次の2点にまとめられる。 1.女青年会(YWCA)系の女性雑誌の目録作りは、『女青年報』『女鐸』『女聲』『婦女』に関して進めた。閲覧・調査可能な範囲のものは、ほぼ作業を終え、今後不完全な部分を補って、刊行できるようにする。 なおこの間、台湾の中央研究院近代史研究所の游鑑明、鮑家麟両氏との交流によって同研究所が『海内外図書館収蔵有関婦女研究中文期刊聯合目録』を編集、出版したことを知った。この目録によって今までの作業の中で欠号部分がどこに所蔵されているか明らかになった。今後の閲覧・調査が期待できる。 2.1934年、林語堂の発言から「婦女回家」論争が始まり、さらに新良妻賢母主義が出現した。それは『女誠』など中国の伝統的な儒教規範による女性観や欧米の近代的女性観とが合わさった日本の女性教育しそう(良妻賢母主義)が輸入され、また他方で同年2月、蒋介石の唱道、推進した新生活運動が始まって、復古的傾向が強化された思潮などによって、作り上げられたものであった。つまり都市の知識人層の性別役割論を再構築したといえる。これらのことで、ナチズムの女性政策や日本の良妻賢母主義教育が当時の新良妻賢母主義の誕生と関連があったことがある程度明らかになった。とりあえず年内に1934〜1937年の状況をまとめて論考にする準備にはいった。
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