平成7年度は、12、13世紀の修道院神学者たちの著作およびその研究書を収集すること、そのうちのいくつかの文献について、ノートををつくり、試訳をしてゆくことが研究の目標であった。文献収集については、(1)基本的な原典の収集(MigneおよびCCLのシリーズ)は、ほぼ満足すべき状態である。特に、ポワチエのギルベルトゥスとサン・ヴィクトールのリカルドゥス以外に、ソ-ルズベリのヨナンハネスやクレルヴォ-のベルナルドゥスの著作についても、視野に入れることができたことは、非常によかった。特にベルナルドゥスについては、ドイツで出版されている最近の批評校訂本5巻を入手した。 研究の中身については、これは予定どおりであるが、年度内にはまだ、所期のテーマである「12世紀の修道院神学」に関して、はっきりした成果をあげるに至っていない。むしろこれは、平成6年度の研究の成果報告と言うべきであるが、12世紀の神学者たちにテーマと方法を与え、所謂スコラ的な学問を確立したものとして、修道院神学の先駆者カンタベリのアンセルムス(1033-1109)および12世紀の修道院神学の言わば集大成としてのトマス・アクィナス(1225-1274)の生涯と神学を研究し、その成果の一部は、アンセルムスに関しては、平成7年9月5日に伊豆、天城山荘で行われた、日本バプテスト連盟神学セミナーで、「救済論の教理史-歴史の変遷の中での救い・中世と現代」と題して講演した。この講演は、平成8年度に日本バプテスト連盟から出版される予定である。 また11月12日には、岡山大学で開かれた中世哲学会で、「受難と救済-トマス・アクィナスにおける『出来事』の問題」と題して、トマス・アクィナスの神学について研究発表をした。この研究は、審査の末、平成8年度の『中世思想研究』誌に、論文として掲載の予定である。
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