(1)「イギリスのロココ」(『世界美術大全集』西洋編第18巻)において、イギリスにおけるロココ様式の定着が社会と思想・芸術の両分野におけるヨーロッパ規模の激動の産物であったことを明らかにした。ハノ-ヴァーの宮廷から芸術家を喚び、またユグノ-の亡命芸術家によりロココ趣味が移植される。その趣味を支え発展させた宮廷や郷紳の社会層、都市化による犯罪・飲酒・スラムといった社会問題、あるいは芸術理論の様々な展開の中で18世紀ロココ趣味を基軸とする近代美学の発展があった。その中で、シャフツベリはあくまでも芸術による人格教育を説いた。 (2)「カッシーラーによるシャフツベリ美学の評価について」において、シャフツベリがなにゆえにドイツにおいて最も受容されたのかについてのヒントを得た。カッシーラーは近代美学をヒューマニズムの延長上に位置づける。それゆえに、なぜシャフツベリがバウムガルテンからカントへの系列においても、また心理分析美学においても評価されないのかを示唆する。即ち、ライプニッツとシャフツベリが共有するプラトニズムに基づき、モナドの形成エネルギーを重視することで理性/感性の形式的二分法を斥ける。そこで、感性的直観の能動的意義が美学的課題として意味をもち、そうした点にこそドイツのロマン的美学者(ヘルダー、ハーマン、モ-リッツ、メンデルスゾーンなど)がシャフツベリを高く評価した理由があった。
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