1.本研究の主目標はシャフツベリが近代美学の生成・展開において果たした役割を明確にすることにある。重点的にヨーロッパ各国との関係から、平成7年度はスコットランド、平成8年度はドイツ(語圏)、そして平成9年度はフランス(語圏)について研究し、関連資料・文献の収集と読査を進めつつ、研究成果は順次論文として発表することをめざした。 2.平成9年度の研究課題である、シャフツベリとフランス(語圏)思想との影響関係についての研究により、さしあたり次の点を確認することができた。 (1)シャフツベリとフランス思想との関係についての従来の研究には、ドイツ思想との関係についてのヴァルツェル、ヴァイザー、カッシーラーといった、要点を押さえたすぐれた概説的研究がないこと。 (2)フランス本国との関係よりは、フランスよりオランダに亡命したプロテスタント系の思想家との交流が際立っていること。(例えば、ピエール・ベイル、ジャック・バアスナシュ、ジャン・ル・クレール、ピエール・コスト、ピエール・デ・メゾ、など。) (3)美学よりも宗教・道徳理論において両者の関係は強いこと。 (4)美学のみならず総合的にみて、フランス思想家の中ではディドロが最もよくシャフツベリに関心を示していたこと。 3.公表可能な研究成果は、近日中に公刊される新たなターンブル論であり、また、ディドロとシャフツベリとの関係を扱った小論も準備中である。また、文献資料の収集においては、平成9年夏に米国スタンフォード大学、UCLAを訪問した際に、当地の専門研究者より小論の構想についてreviewを受け、さらに推薦された論文集のコピーを収集した。
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