科研費の補助により行った調査は以下の通りである。 (1)瑞龍寺(高岡市関本町)所蔵絵画の悉皆調査 (2)勝興寺(高岡市伏木)所蔵絵画の悉皆調査 (3)個人蔵・親鸞上人伝絵断簡調査 (4)個人蔵・扇面源氏絵調査 (5)個人蔵・小川破笠筆能絵調査 (6)光明寺(新湊市)所蔵・弘法大師行状絵調査(未了) (1)瑞龍寺の悉皆調査は、98年4月20日より開催の国宝指定記念展の予備調査もかねており、高岡市教育委員会の後援を得て行った。瑞龍寺所蔵品は、主に加賀第3代藩主・前田利常の奉納品で、狩野探幽、尚信安信、常信、松花堂昭乗などの作品のほか、中国絵画等から成り立っている。江戸時代より管理がゆき届き新出資料は、祖師絵伝のみであった。調査結果は、記念展図録として出版される予定である。 (2)勝興寺所蔵品に関しては、重要文化財に指定されている「洛中洛外図屏風」と、「日月花木図屏風」はよく知られているが、それ以外の作品については目録もない状態であり、全般に作品の質も高いというわけではなかった。ただし、狩野晴川院養信筆「刑和僕・百猿・百鶴」三幅対ほか、狩野養福筆の源氏絵二幅対、狩野探雪筆「寿老人・松に鶴」三幅対などの御用絵師の作品が見つかった。これら御用絵師の作品と、歴代住職と裏方の肖像画のみは、後日写真撮影を行った。 (3)、(4)は筆者不明ながら、江戸時代初期にさかのぼる作品であった。 (5)は、津軽第五藩主・津軽信寿が、小川破笠に描かせた二十幅対の「能絵」の内の四幅と思われる作品であった。 (6)は、調査継続中であるが、富山・千光寺が中心となり、富山県内の真言宗六寺が京都に発注したもので、延享年間の制作。作品の質は極めて高かった。 富山県には、数々の名刹があり、個人コレクターも質の高いコレクションを有している。しかしながら、県立の博物館施設がなく人目に触れる機会がなく、絵画作品に関する資料も整備された状況とはいえない。個人の調査とはいえ、科研の補助を受け、高岡市内の巨刹の悉皆調査をはじめとして、数々の調査を行うことができた。今後、逐次、雑誌などにおいて資料公開を行いたいと考える。
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