ドクサラス「画論」の翻訳・・・1871年のランブロス版によって作業を進めたが、当初予想したよりもはるかに翻訳は困難であることがわかった。それは、語句の段階からひとまとまりの言説の段階にも及び、端的にいうならば、ギリシア人にとっても、これを現代の平易なギリシア語に置き換えることにどれほどの意義があるか(A.ツェリカス氏)というほどのものであった。そこで私たちは、翻訳そのものの作業は中断して、「画論」の技法記述の部分の大要把握の方向に向かったが、成果を発表するまでには至らなかった(木戸、上田)。そこで、この研究と平行して実施しているディオニシオスの「エルミニア」の研究成果報告(今年夏出版予定)にドクサラス研究の一部を組み込む予定である。 ドクサラスの人と生涯・・・S.ベッティーニ、プロコピウらの研究にもとづき、ドクサラスの画業とギリシア独立の闘士としての活動を概観した。また、同時代のヴェネツィアにおけるマドンネリについて調査した。平成8年ギリシア(カルペニシオ)におけるディオニシオス学会に出席した際、アテネ大学のツィアス教授他からドクサラス研究に関する教示をいただいたが、ギリシア近代美術史はドクサラスから始まるという認識があるものの、その研究は祖国においても不十分であることを知らされた(木戸、上田)。 模写・・・ドクサラスの油彩画と同時代のギリシアイコンとを模写し、組成と技法の面から検討を加えた(寺田)。
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