本年度は特に、自律神経反応やそのパターンの背後に想定できる媒介的な機構の解明を目的として、身体的興奮に関わるアラウザル系や痛調節機能を有するオピオイド系の活動に注目した。高活動性行動をとりあげたのは、こうした複数の系間の機能的連関を明らかにするのに好都合であると考えたからである。これまで得た成果は主として、高血圧疾患モデルラットに見られる痛み関連現象の実験的分析と、一般活動性やそれへの薬物効果に注目した行動解析によるものである。痛みの機構と関連して、人の痛反応発現に主要な役割を果たす情動原因についても検討した。また、人間の日常活動の長時間記録と生理的活動との対応を捉える試みを継続して行っており、これまでの成果は学会で報告してきた。以上の成果を要約すると次のようである。 1.オピオイド系活動を調べるのに、高血圧疾患モデルラット(SHR)を用いた。まず、このラットが高い痛反応閾を示すこと、そしてさらに多動が発現することを認めた。これらの行動的資料の比較のために正常血圧を示す複数系統のラットを用いた。SHRでの結果がオピオイド系活動の慢性的活性化と関連するためなのかを検証するためヒドララジンやクロニジンなどの降圧薬を使用している。 2.接触型熱刺激提示装置を用いて、痛反応閾下での感覚強度と感情強度とを調べた。感覚量は刺激強度の関数として増大した。感情評定はこれと異なり痛反応閾近傍で負方向へ変化した。 3.人間の日常活動場面での高活動性行動の発現を観察した。これまでは主として通常人を用いて高活動発現の周期現象を調べた。約2時間周期の活動の高まりを観察したが、情動体験との対応については明確な結果は得ていない。この点を明らかにする研究に取り組む計画を進めている。
|