本研究課題の目的にかなった実験を行うためには、提示刺激の形と明るさ・色を独立に組織的に変化させる必要がある。そこで、初年度の本年度は、まずそのような研究目的を達成するために必要な実験装置の構築と、本実験の前段階としての予備実験までを行うことを目標とした。そのため、Macintosh社のPowerPC9500/131システムを利用した高解像度の21インチカラー・ディスプレイ(Radius社のPress View 21SR)による視覚実験装置を構成し、予備実験を行ってきた。本実験で検討を加える問題は、具体的には、(1)幾何学的錯視における明るさ・色の影響の有無;(2)透明視における明るさ・色の影響の有無;(3)輪郭視(主観的輪郭線も含む)における明るさ・色の影響の有無:などである(もちろん、予備実験の結果によっては、大きな変更も有り得る)。上記の装置を用いると、形と明るさ・色を独立に、しかも組織的に変化させて、自由に刺激を生成することができる。このような利点をもった本実験装置を使用し、形態視における明るさ・色の知覚の役割について、現在も予備実験を行っているところである。ただ、上記のMacintosh社のPower PC9500/132システムの完成が、システムに必須のビデオボードの生産不足のために遅れ、予備実験の開始も遅れたため、まだ明確な結果を得るには至っていない。しかし、来年度には本実験も開始することができるようになり、形態視における明るさ・色の知覚の役割についての研究に十分貢献しうる結果が得られることが予想される。
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