研究概要 |
本研究課題の当初の目的は,(1)幾何学的錯視における明るさ・色の影響の有無;(2)透明視における明るさ・色の影響の有無;(3)輪郭視(主観的輪郭線も含む)における明るさ・色の影響の有無:などに検討を加えることであった。したがって,そのような目的にかなった実験を行うためには,提示刺激の形と明るさ・色を独立に組織的に変化させる必要があるので,まず前年度においては,本研究目的を達成するために必要な実験装置の構築を主に行った。具体的には,Macintosh社製Power PC 9500/132システムを利用した高解像度の大型(21インチ)カラー・ディスプレイ(Radius社製Press View 21SR)による視覚実験装置を構成したのである。さらに,本年度には,新たにメモリ・ボードおよびビデオ・ボード(Radius社製Thunder30/1152)を購入し,実験装置の一層の充実を図った。ところが,本実験装置を用いた種々の予備実験の過程から,上記の目的との関連において,(1)幾何学的錯視の生起条件とその錯視図形に対する美的判断との関連性;および(2)主観的輪郭(形態知覚に重要な役割を担う)の運動条件とその見え:という,その解明が形態視研究において非常に重要な意味を持つ新たな問題が浮かび上がってきたのである。そこで,現在は,この2つの課題について重点的に実験を行っているところである。したがって,その結果は,形態視における明るさおよび色の知覚の役割についての研究においても,大きな寄与をするものと考えられる。
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