研究概要 |
本研究課題においては,中心視野から周辺視野(本研究では視角で約40°までの領域の網膜部位を扱う)までにおける色と形の知覚特性について実験的検討を加えることが目的であった。そのため前年度には,まず第一に,上記の研究目的を達成するために必要な実験装置の構築を主に行った。具体的には,Macintosh社製Power PC 9500/132システムを利用した高解像度のカラー・ディスプレイ(Radius社製Press View 17SR)による視覚実験装置を構成した。さらに,本年度には,新たなビデオ・ボード(TrueVision社製Bravado 1000)を付加し,実験装置の一層の充実を図った。そして,種々の予備実験の過程から,(1)中心視と周辺視の色覚を考察する上で非常に重要な役割を果たす黄斑色素濃度の測定;および(2)中心視と周辺視における主観的輪郭(形の知覚に重要な役割を担う)の見え方:という新たな問題の検討が,本実験装置を用いることによって可能となるという見通しが得られてきたのである。端的に言えば,従来は特殊な光学系装置(Maxwellian view optical system)を用いる大掛りな実験によってのみ可能であった黄斑色素濃度が,本実験装置のようにコンピュータ・ディスプレイ上で比較的簡単に,しかも十分な精度で測定ができること,および中心視と周辺視での主観的輪郭の知覚の特性などが明らかになってきた。現在も,上記2つの課題について重点的に実験を行っているところである。その結果は,中心視と周辺視における色の知覚および形の知覚の特性の解明に大きな寄与をするものと考えられる。
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