研究代表者は、平成7〜8年度の科学研究費補助を受けて、「コフカリング様パターン(明るさや色の異なる誘導領域にまたがっている検査図形の分割や分離が、検査図形の対比的な見えに大きな変化をもたらす図形)」を用いて、『形態の意味的把捉が視覚的同時対比に及ぼすトップダウン的効果に関する研究』を進めてきている。平成7年度では、「対比効果(明るさあるいは色の差異の拡大)」と「同化効果(差異の縮小)」との関係を、「縞模様」の刺激図形を使用して検討した。そこでは、"縞の幅の変化が、「同化的な見え」と「対比的な見え」をもたらすことをよく知っている観察者"には、強い対比的影響の中で「同化的な見え」も報告された。すなわち、この種の図形に対する「経験の差異」が、図形の知覚に「把捉の違い」をもたらしていることが確かめられた。平成8年度では、前年度の研究成果を踏まえて、誘導図形の2領域に、形態の異なる検査図形を組み合わせた「並列配置幾何学図形」において、検査図形がどのような影響を誘導図形からから受けるかを検討した。その結果、「経験の豊富な観察者群」では、同一の形態が組み合わされている場合に、同時対比量が明らかに大きくなっていたが、「経験の乏しい観察者群」では、そのような傾向が認められなかった。これは、「本研究への経験の異なる観察者群」に、「刺激形態の類似性」と同時対比に関する異なった"認知的な把捉(態度)が取られていたこと"を示唆しており、『感覚的な視覚的対比に対して、認知的レベルからの"トップダウン的な促進効果"が及んでいること』を確認した。これらの成果については、「研究成果報告書」がまとめられており、国内外の学会での発表をはじめ、学術雑誌への掲載を進めている。しかし、本研究では、より高次な「文字」へのトップダウン的な効果にまでは検討を進められなかったので、この点に関しては、今後の検討課題としたいと考えている。
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