1.目的:問題解決場面で動物が示す組織的探索(試行錯誤)の発展過程、及び組織的探索パタンが学習効率に及ぼす効果を調べること。そのため、弁別学習予備訓練のレバ-押し行動形成中と本訓練中における組織的探索行動パタンを詳細に記述、訓練中の位置偏好の有無と学習の遅速との関係を分析。2.方法: (1)被験体:オスのラット合計50匹。(2)装置:弁別学習装置、パソコン、ビデオカメラ各1台。(3)手続:a.レバ-押し行動形成給餌レバ-(出入可能、左右一対)と試行レバ-(給餌レバ-とは反対側の壁にある)で実施。報酬は手動でマガジンを作動、給餌レバ-下の餌皿に。b.本訓練 明暗弁別を1日60試行ずつ正答率90%の規準まで。c.実験の制御と記録パソコンで。d.録画 行動形成中と本訓練中の動物行動をカメラで。3.結果:(1)給餌レバ-押し行動形成期 動物は恰も自分のポ-ズと給餌機音との随伴性を組織的に探索する如く振舞い、偶然によるレバ-接触、接触と音の随伴性の再確認、連続的レバ-押しへと進む。(2)試行レバ-押行動形成期 動物は先ず試行レバ-の前に来て立ち上がる行動を、次にレバ-押し行動を形成。上記同様、動物は自分の位置・ポ-ズ・動作と音との随伴性を組織的に探索しつつ課題を遂行。(3)学習期 規準到達前の各試行で、左右をランダムに選択する動物、交替に選択するもの、一方に偏って選択するものが出た。後二者を規則的位置反応群とした。なお、学習完成直前には、負刺激忌避、回り道方略、選択点での代理性試行錯誤等の行動が順次生起。(4)位置偏好と学習の関係 位置偏好の代わりに規則的位置反応傾向の有無と学習遅速間の分割表のカイ自乗検定の結果、10%水準で連関傾向(規則的位置反応が学習を促進する傾向)があった。4.要約:試行錯誤は無作為行動ではなく行動と報酬手掛間の随伴性の組織的探索である。また、位置偏好は学習を妨害するよりむしろ促進すると思われる。
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