研究概要 |
3次元物体を触覚を用いて探索するときに、人はどのような分節化方式にしたがって対象を認識しているかを探るのが本研究の目的である。昨年度は凹曲面を触覚的に探索させ、以下の直径と深さをもつ標準刺激と直径6cmでさらざまな深さをもつ比較刺激の間の主観的等価値(PSE)を求める実験を5つ行った。その結果、直径が3cm,4cm,5cm;深さが5mmまたは7mmの標準刺激の凹面(球面の一部)を触探索すると、直径が小さいほど、また深さが浅いほど深さを過大評価することがわかった。 本年度は、この傾向がもっと広範囲に成り立つかどうかを調べた。まず直径が4.5cm,6cm,7.5cmで深さが7.5mm,10.5mmの標準刺激と直径9cmでさまざまな深さをもつ比較刺激の凹曲面についてPSEを調べたところ、その値は相似比がこれの3分の2のものとほとんど同じであることがわかった(実験1)。そこで直径が3cmで奥行きが3mmのものと、直径が4,5cmで奥行きが4.5mmのものについてもPSEを求めたところ、これらは相似な図形であるにもかかわらず、PSEの値は両者で大きく異なっていた(実験2)。つまり相似比が一定であれば錯覚量も一定であるという傾向は、ある限られた範囲内でのみ成り立つ傾向であることが分かった。 以上の結果と昨年の実験3,4の結果を合わせ考えると、指によくなじむ曲率をもつものは錯覚量が大きい傾向があると言えそうであるが、これを確定的なものとするためにはさらに検証実験が必要である。それらが最終年度である来年度の課題である。
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