「瞬目の視覚機能」について明らかにすることが本研究の目的であるが、そのために、初年度は約10分間の暗順応過程での瞬目の振る舞いを2つの実験によって検討した。その結果は、予想に反して、暗闇において瞬目はやや抑制されることが明らかになった。視覚障害者においても晴眼者とあまり瞬目率は差はないとする従来の研究からは予想できない結果であった。しかし、この結果は、その後引き続いての注意深い解析によって、実は実験中に入り込んだ雑音によることが判明した。雑音とは、実は暗闇が中途半端で被験者はどうも多少見えていたらしいことが分かったからである。したがって、ぼんやり見えるようになった暗闇では返って目を凝らすことになり、瞬目率は抑制されたと考えた。 そこで、このことをもっと完全に確かめるために、暗順応の時間を30分に延ばし、かつ徹底した暗闇を作り、再度確かめるための実験を行った。目的はかなりの程度達成されて、目下その詳しい解析に移っているところである。まだ完全な結果は得られていないが、途中の段階での印象では、やはり、(1)暗所視と明所視では特別に瞬目率の差が出てくるとはいえない、(2)しかし、両条件では瞬目率には差がないが、瞬目波形において特徴が得られた、つまり、暗所視において波形は平坦化する傾向が認められた、(3)暗所視では心的負荷や認知的複雑さなどの心理的な要因が直線的に影響する、ことなどが示唆されつつあり、暗所視における瞬目の振る舞いの一部がある程度明らかになりつつある。瞬目の視覚機能について考える上で貴重な知見がなお得られるものと確信している。引き続き、データ解析を完全なものにして新しい知見を提供していきたい。
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