研究概要 |
平成7年度には実験装置を2種類作成し,絶対閾・弁別閾測定実験を行なった. (1)第1実験装置は刺激と刺激呈示部から構成されていた.刺激にはエッチング加工したステンレス片を採用した.まず,ステンレス片の表面を凹凸0.1μm以下となるように研磨した.次のこの表面に,高さ0.5〜25μmの畝を畝断面が矩形波状になるようにエッチングにより作り,刺激として用いた.刺激呈示部は中空構造のアルミ製装置で,恒温水循環装置に接続されて5〜45℃の範囲の任意の温度に設定可能であった.実験時には,この刺激呈示部上にステンレス片刺激をセットし,ステンレス片の温度を調節した.ヒトの触覚感度は環境温度の影響を受け易いので,このようなシステムが必要であった.第1実験装置を用いて,絶対閾・弁別閾を測定する心理物理実験を行なった.その結果,弁別閾値は極めて正確に測定できたが,絶対閾は予測より小さく測定はあまり成功しなかった.精密研磨紙を用いた微細表面粗さ弁別実験結果に比較すると,本実験で得られた弁別閾はより小さく,精密がより高いことを示すものであった.これは,皮膚機械受容単位の神経発射特性や中枢における神経計算を考慮すると極めて妥当な実験結果であり,また宮岡の提唱した「振幅情報仮説」を強く支持する結果でもあった. (2)第1実験装置の欠点を補い,またより広範囲の測定を行なう目的で,第2実験装置を作成した.第2実験装置は,2個のステンレス片の段差を0〜30μmの範囲でコンピュータ制御する仕組みとなっていた.ステンレス片の温度はペルチェ素子により0〜50℃の範囲で変更可能であった.第2実験装置での実験は現在実施中である.
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