研究概要 |
物理的には等価な電撃ではあるが、それからの逃避が可能か否かによって、ラットに喚起される情動に違いが見られるかどうかを、二つの実験によって予備的に検討した。実験1は既有の装置(KGBox-24,昭和56・57年度科学研究費試験研究(1)にて作成)を用い、実験2は今回申請し購入した装置によって実施した。実験1は3匹のラットを1組にしたtriadic designで行われた。実験1Aではバ-押しによって電撃を停止できるMaster(M)群と、逃避は不可能であるが同量の電撃を受けるそれのYoked群(Y)2群で行われたが、Y-F群には電撃後に外的フィードバック刺激を与え、Y-noF群にはそれを与えなかった。その後、電撃を受けた場所をどの程度避けようとするかによってその場面に条件づけられた恐怖を測定した。恐怖の程度においてM=Y-F<Y-noFを予想したが、恐怖において群間に差を認めることは出来なかった。実験1Bでは、まったく同じことを、恐怖の指標を電撃を受けた場面でラットが示す凍結反応に変えて行ったが、結果は実験1Aと同様のものであった。実験2はシャトル箱で実施され、隣室への移動行動によって電撃から逃避できるMaster群と、それと対にされ同量の電撃を受けるYoked群で行った。恐怖の指標としては、シャトル箱のそれぞれの部屋に取り付けられた摂水管からのラットの水飲み行動の抑制を用いた。5対のラットを用いた実験において、恐怖の程度に2群間に予想されたようなM<Yという方向の差は認められなかった。現在、この実験で明らかになった問題点を改めて、実験3を実施中であるが、新しい装置での新しい試みなので、今回の研究計画に則した大規模実験を行うまでに、まだ予備的探索が必要な段階である。したがって本格的な実験は平成8年度に実施することになる。
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