研究概要 |
平成7年度においては,幼稚園年長組および年中組幼児を対象として,個人の行動の結果に対するコントロール欲求の強さの測定を行った。実験は,年長・年中ともに,6月,11月,3月の年3回行い,コントロール欲求にみられる性差,年齢差,および1年の間の縦断的な変化,の検討を行った。 その結果,以下の諸点が明らかになった。(1)課題においてよい得点をあげようという欲求(結果をコントロールしようとする欲求)は,課題場面における行動観察から,年長児のほうが強いことが示唆された。ただし,この欲求の強さについては,上述した変数の影響よりも,個人差の要因が大きく影響していた。(2)結果のコントロールにおいて,課題がチャンス事象である場合とスキル事象である場合では意味が異なることを,この年齢段階の幼児は,あまり理解できていない。(3)実際の遂行成績と次回の遂行結果の予測とは随伴的ではなく,予測において結果を過大評価する傾向がみられた。 平成8年度においては,7年度と同じく幼稚園年長組および年中組幼児を対象として,他者の行動結果に対するコントロール欲求の強さの測定を行った。自由遊び場面に,他者の行動結果をコントロールすることが可能な場面を設定し,その行動観察により対人場面におけるコントロール欲求の現れ方について分析を行った。その結果,この対人的コントロールについても,性差・年齢差を越えた個人差が大きいことが示唆された。すなわち,個人の結果に対するコントロール欲求の強い幼児が,必ずしも,対人場面において,他者の行動の結果に対する強いコントロール欲求を示すとは限らなかった。 以上の結果より,コントロール欲求は,個人の認知能力の発達と社会性の発達がその態様に大きな影響を与えていることが推測された。
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