自閉症児Aのセラピー経過と母親との相談内容(1回2時間、38回)をビデオ解析し、理論的考察を行った. (1)自閉児の主要賞状の一つである「同一性の保持、常同行動」場面におけるセラピスト・母親の関わりが発達を促す「軸」である.即ち、母親にとっては、常同行動を全く意味のない・理解できない行動であることが、自閉児によって常同行動は世界の安定性一貫性を確認し、不安を取り除くことが出来るの唯一の手段である.自閉児はFrith (1989)のいう「断片化さあれた世界」に生きていて、あらゆる事象は突発的偶発的で、制御不可能なのである.かれらが安心出来るのは世界(ものと人)がいつも同じ判追うを返してくれることである. (2)当初、本児は恐怖が心内に生じた時、常同行動としてのミニカ-遊びに逃げ込み、無表情かつ鬱的で、遊びに熱中するので、母は彼が感じている不安・恐怖を了解出来なかった.彼は唯一掃除機には恐怖反応(心拍数の飛躍的増大を指標とする)を明確にしていた.ミニカ-遊びを上記の様に解釈し、母親は抱っこし、不安を取り除く対応を遊びの中で継続的に行った.この結果、彼は恐怖から逃れる為の道具として母を利用する戦略を獲得した.母は自分が道具にしかすぎないこと、情緒的交流が無いこと、自分の要求のみに固執する子どもに愛着することは困難であった. (3)安心できる遊び中の母子交流を通して、情動表現を開始、Social referenceの対称として母親をみなすようになった.感情教育をする中で、自己の鏡映像に興味を示す等「自己」を発見し、遂に、彼は愛着対象として母親を発見するに到った. 生得的なNonuerbal communication手段である、情緒的交流を自閉児は学習によって獲得可能である.断片化された世界から自閉児を引きずりだし、親が構築した安定的世界内での経験の蓄積が重要である.
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