研究概要 |
今回の研究の成果を,当初掲げていた研究計画に即して以下に述べる. 1.研究計画(1):昨年度に引き続き高度難聴小学校児童27名および中学校生徒6名にたいして統辞機能の発達を明らかにするための事前テストを実施した.事前テストは授受構文の変換課題を含むものでこれまでテストとしてはあまり確立されていないが,診断テストとして利用できる可能性をもつことできた.テスト実施の結果,(1)難聴児における統辞機能は、健康児に比べればその発達が一般に遅れる傾向を示すが,(2)年齢が進むにつれて統辞機能の獲得が進む.(3)しかし,難聴の程度が重度になれば,統辞機能の獲得はきわめて困難であることがあきらかになった.形成実験は次年度中に取り組む予定である. 2.研究計画(2):事前テストの中で,テストの過程で学習のみられる児童とそうでないものが明確に区別できた.就学児童における学習の可能性の問題であり,この分析等は次年度の課題である。 3.研究計画(3):われわれがこれまで幼児期に助詞の形成教育を行ってきた対象児を追跡して分析した結果,対称群の生徒児童に比較して統辞機能のテスト成績がかなりよかった.この子どもたちの学力の達成度と日常の学校生活の自立の程度を検討することが次年度の課題である.すでに今年度1事例ではあるが分析した結果,さまざまな問題点が浮き彫りにされている.
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