今回の研究成果を、当初掲げていた研究計画に即して以下に述べる。 1.研究計画(1):これまでに作成してきた幼児用の構文学習プログラムとその実施方法の最終チェックのために、昨年度に引き続き、あらたに4歳の高度難聴幼児2名を対象に格助詞の形成実験教育を行った。現在まで訓練は非常に順調に進行しており、実践のための有効なマニュアルとして最終的にまとめることができる見通しが立った。 2.研究計画(1)(2)(3):普通学校の難聴学級在籍の4年生児童2名を対象に格助詞の形成実験教育を行った。平成9年度6月から10年3月までの10ヶ月にわたり、格助詞「が」「を」を含む三語一文(不可逆文・可逆文)、授受文(あげる-もらう;かす-かりる);主語-述語の関係の理解、能動-受動文の産出・理解・態の変換等の指導を30時間行った。基本的方法論は幼児用の構文学習プログラムに準拠するものである。その結果、いずれの構文においても少ない指導時間にもかかわらず、著しい進歩が見られた。今後の継続して行う指導の見通しが立った。 3.難聴生徒の統辞機能の獲得水準を評価するための簡易テストの作成を試みた。上記2で述べた各種構文の発達の目安を得るために、試作のテストを小学1〜2年生の健聴児計160名に実施した。その結果、これらの構文はほぼ1年生で理解・産出・変換が可能であることが判明した。
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