脳性麻痺児の適応技能の発達を3つの視点から縦断的及び横断的に調べ、発達変化のモデル的分析を行った。累積(階層)的モデルは発達の時間軸に沿って技能が向上(得点が単調増加)するという決定論モデルであり、非累積的モデルは発達を状態変化の確率として表現する(潜在マルコフモデルなど)。従って、停滞や退行あるいは枝分かれの可能性を残すものである。 1.遊びの発達のモデル解析 肢体不自由児施設の脳性麻痺児55名を対象に行った遊びの発達に関する追跡調査では、全体として一人遊びや平行遊びなどが次第に社会的相互作用を伴う各種の集団遊びに移行する傾向が認められたが、性、年齢、障害の重さなどの個人差も大きく、集団としての傾向とは異なる枝分かれ的な発達変化の存在が示唆された。しかし、サンプル数の制約により、統一的な結論にはいたらなかった。 2.社会生活能力のモデル解析 肢体不自由児施設の脳性麻痺児35名を対象に、適応技能(社会生活能力)の経年変化を調べた。その結果、個人差が大きいものの1年の間に社会生活年齢は平均4ヵ月しか伸びず、年長児ほどその傾向が高いことがわかった。さらに、発達が停滞するだけでなく後退する児も見られ、累積モデルは年少児には当てはまるが、年長児には当てはまらないことが示唆された。 3.養育者から見た障害幼児の機能的能力の発達のモデル解析 母子通園施設に通う心身障害児の養育者(母親)54人を対象に、障害を介助の度合から調べるWee-FIM及び介護に伴うストレスを評価するQRS-Fを実施し、非累積的モデルである共分散構造モデルに基づいた因果関係を分析した。その結果、機能的能力は時間とともに向上するというよりは、障害の特徴や重症度によって規定され、同じ発達過程を異なる速度で進むという累積モデルは妥当しなかった。
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