本研究の主要な目的は、てんかんをもつ生徒の行動状態を解析するコンピュータとVTRを活用したシステムを検討することである。 本年度は昨年度からの継続で、てんかんをもつ生徒を対象として、行動状態をVTR記録し、開発したコンピュータプログラムにより解析を行った。この解析結果と在籍する養護学校における行動記録と、入院している病院の病状記録との関連を分析した。 その結果、てんかんをもつ生徒の状態を把握するために有効な複数の標的行動があり、その組み合せが生徒の行動全体を特徴づけることが明かとなった。これらの複数の標的行動を前記の解析用コンピュータプログラムのデータに基づいて、各日毎の単位時間における量的行動プロフィールを描くことが可能である。また、標的行動の発生状況を時系列上に再現することで、その日の質的プロフィールを描くこともまた可能である。 1名の対象児において、この量的及び質的プロフィールと行動記録・病状記録にある大きな変化とを比較した。その結果、特定の標的行動の発生の多さ少なさではなく、プロフィールとして表現される通常とは違った標的行動の発生状況の組み合わせが、行動・病状記録上の大きな変化と関連することが示唆された。 VTRによる行動状態の記録とその解析、行動・病状記録との比較検討は、現在、他の対象児において継続中てある。その中の1名の対象児では、標的行動の増減が、その日の授業形態や通常生活パターンからのズレと関連することが確認されている。これは、本研究の行動観察システムにより収集した標的行動を指標として、逆に対象児に適応した授業形態や生活パターンを検討することができることを示すと考えられる。
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